2012年05月08日
創刻の旅・FINAL (大峰山脈 奥駈道)
この結果をどう見るか(読むか)・・・
うん、そこが大事大事♪
●4月28日
仕事を終え、急いで帰り夕食を済ませ風呂に入り身支度整え出発!
自宅~東松山駅:バス
東松山駅~新宿駅:電車
新宿駅~八木駅(奈良県):高速夜行バス
今回は全て公共交通機関と徒歩のみの旅です
●4月29日
八木駅から吉野駅まで電車を乗り継ぎ
吉野駅で水の補給をしてタクシーで奥千本まで一気に向かいます
が・・・
ここでいきなりハプニング!
なんとタクシー乗り場にストック置き忘れ(←バカーーッ!)
運転手さんに謝って途中からいったん引き返してもらう
まぁ、ストックは無事にベンチで昼寝していました(笑)
この運転手さんも山経験者らしく
「ストック無しで奥駈は無理や!えらいこっちゃで!」
自分のことのように必死に狭い道をタクシー飛ばしてくれました
その分タクシー料金もかさんだが、安全第一です
いよいよ奥駈道の始まりです
ホントはもう少し上までタクシーは上がるんだけどここで“降ろされ”ました
「本気で行くんならここから行きや、ここがほんまのスタートやで!」
なんか、良い運転手さんに巡り会えたな
ついに来たなぁ・・・
天気は最高、暑いくらいです
2時間で四寸岩山到着(標高:1235.8m)
小天井ヶ岳・五番関 女人結界門
ここから先は女人は入れません
しかしこの辺りで体調に異変が・・・
なんと、今まで経験したことのない程の靴擦れが踵にできてました
なんで!?
原因は今回新しくしたインソール
今までよりも厚くなっていた分踵に変な摩擦が生じてしまったようです
ここでインソールを抜き取る
踏ん張りが利かなくなるのと足裏にマメができるのは覚悟の上だが
こんな踵じゃこの先歩けない
背に腹は代えられんのでインソール無しの靴で再スタート
しかし思うように距離が稼げません
結局山上ヶ岳は越えられず
手前の洞辻茶屋近くでテン泊
●4月30日
今日も朝から良い天気♪
・・・なのだが、西の上空の雲が嫌な気配を見せています
急ぎます!
でも途中には・・・
こんな岩場(高さ10m程の垂直の壁)もあります
※コレもれっきとした行場
軽くボルダリングで遊んじゃいました(笑)
雲の動きが速い!!
山上ヶ岳 大峯山寺
東ノ覗岩はパス!
阿弥陀ヶ森 女人結界門
ここで女人結界を出ます
大普賢岳(標高:1780.1m)
大普賢を越えた辺りでなにやら下の方からエンジン音が・・・
なんと県警のヘリです!!
どうやら捜索作業をしているようで誰かの名前をずっと呼び続けていました
近くに来た時にはシグナル“N”を出しました
※両手をV字に上げると“Y”(YES)、右手を右上方・左手を左下方にすると“N”(NO)
その後も小ピークをいくつも越えます
これまでの熊野古道もそうだが
なんでこんなにもピーク越えをするのか?
小さなピークなど巻道を造った方が楽に安全に歩けるはずなのに
目標のピークかと思ってピークに立つとその先にまたピーク
今度こそと思ってもまたその先にピーク
だんだん腹が立ってきます
そうしてやっと本命のピークに立つ
いにしえ人は一体何を考えこの道を歩んだのか
・・・うん、そういうことなんだろうな・・・
15:00頃にはついに雨が降り出し雨具着用
夕方、弥山(みせん)に着いた頃には本降り
今日はここで山小屋泊です
それにしても12時間!よく歩いたもんだよ、あの踵で
●5月1日
天候はさらに悪化、暴風雨状態
とは言っても標高1800mを越えているため雨雲の上
上から降ってくる雨ではなく下の雨雲から吹き上げられた雨粒が暴風に混じるという感じです
実際空は明るく気温もそれほど低くはない
小屋管理人さんの助言もあり少し遅めの7:00に小屋出発
ついに近畿地方最高峰八経ヶ岳ピークに立つ(日本100名山 標高:1914.9m)
晴れていれば最高のパノラマが広がっているんだろうなぁ
しかし展望は全く望めず先を急ぐことにしました
が!
その後の下りでまたしてもアクシデント(汗)
雨で濡れた笹に足を滑らせ
岩に右膝強打
20kgを担いだ全体重が右膝に衝撃荷重として加わる
打った瞬間の痛みからしてお皿割れたと思いました(マジ)
痛さで歯がガチガチ鳴るほどでした
震えながら痛みをこらえ、骨に異常がないことを確かめて又歩き出します
※右膝は5/8現在の今でも痛く、気持ち腫れあがっています
アクシデントはさらに続く
左ストック破損
最初にティップ部が折れ、ついにはインナーワイヤーが切れた
こうなると使い物になりません
壊れたストックをザックに仕舞い込み
シングルストックで歩きます
昼前にチェックポイントの楊子ノ宿小屋着
昼食(行動食)を摂りながら以後の行動計画を練る
今日の予定目的地深仙小屋まで行こうと思えば行けたが
この膝と踵では釈迦ヶ岳手前の岩場(危険ゾーン)で夕刻近くになると予想
そのまま停滞を決意
小屋にはすでに2名が昨日より停滞中
私の後に若者2名が到着、合計5名でゆったり(?)と停滞~泊
その夜はずっと考えていました
・・・・・・・・・
苦しい葛藤です
“1年間の準備・計画”
“以後の日程”
“装備”
“体調” etc...
そもそもこの旅ってなんなのか?
なんのための創刻の旅?
成功? 失敗?
・・・・・・・
答えは決まりました
●5月2日
天候好転の兆しなし
先の停滞者2名は明日の天気好転を待ちもう1泊停滞
私自身それも考えたがその先のことを考え一つ先の深仙小屋まで進みます
私を含む3名が出発(私は2名よりも1時間早く出発)
短い距離ではあるが非常に険しい道のりです
去年の台風の爪痕が未だに残っています
崩落箇所は大きく3カ所
今にも崩れ落ちそうなガレ場を慎重にトラバース
登山道は沢状態
稜線の岩場は真横からの容赦ない暴風
トムラウシの事故が脳裏をよぎる
釈迦ヶ岳のお釈迦様像
天気が良ければ最高のトレッキングコースであることは間違い有りません
トラバースも岩場もウェルカムファクターになるはず・・・なのに・・・
正直、これほど辛い(体調、心調)山行は経験したことありませんでした
風裏に入ったら座って休もう
ビバークシートにくるまって少し寝たら天気良くなるかも
1日遅れて会社休んだって大丈夫だよ
危険な心理状態です
でもそれを自覚できているうちは大丈夫
とにかく弱気にならないことが肝心
弱気になったら疲れに呑まれちゃうからね
一気に歩ききり10:15深仙小屋着
きっちり1時間後に後続の2名も到着
夕刻になり登山者が続々と到着
小屋は定員6名、すでに満員
隣のお堂の方にも5名こちらも満員
●5月3日
天気好転!
6名それぞれがお互いの行動計画を確認し合ってバラバラに出発
6:00 3番手に私が単独で出発
太古の辻
ついにその時を迎えます
縦走続行ならまっすぐ前へ
エスケープなら左
答えは決まっているはずなのに足が前へ出ない
それでもまだ迷ってる自分
しばらく考え意を決します
左です
そう、下山します! エスケープです!!
これが答えです
でもそれは山行の失敗を意味しない
それは選択肢の一つ
仕事でも釣りでもよくある話し
現場で試される選択肢
“今ある状況で最善を尽くせ!”
その答えが私にエスケープという選択肢を選ばせました
小屋泊6人中縦走続行は1名、残り5名はここで下山を決めました
『失敗ではない、選択肢の一つ』
開き直ると心も軽くなるね♪
今回唯一のセルフ(笑)
前鬼・小仲坊へ降りる途中の沢でくつろいじゃったりしてます
※これでも登山道です
ここも登山道(跡)
去年の台風による崩落でこんな場所がいたる所出てきます
あるがままの自然の中を歩くのが奥駈道
これを無惨と思うのは人間の心理であって自然界はそれを素直に受け入れている
危険と思うのは人間だけであって獣たちは普通にそこで暮らす
熊野の奥深さをあらためて実感できました
二つ岩
定刻通りに小仲坊着
小休止後舗装路を3時間歩いてバス通りまで下ります
不動七重滝(日本100名瀑)
この迫力は写真じゃ無理!
さらに下っていくと
川幅も広くなり止水となって・・・
なんか懐かしい光景!
そう、ここは池原湖です!!
バス釣りやってた頃は(過去形かよ:笑)あんなにも憧れの地だった池原を
こうして山行の途中で訪れるとはね
バス停に着く頃には暑いくらいに日が差していました
靴を脱いでついでに靴下も脱いで足を乾かしましょう♪
うっ・・・
バスに乗りその日の宿泊地“きなりの郷”へ向かいます
オートキャンパーに混じってニーモってばカワイイ♪
※踏みつぶされやしないかと内心ヒヤヒヤものでした(笑)
さらにヒヤヒヤしたのが・・・
なんとキャンプ場はダム直下!
地震が来てダム決壊!!
なんてことはないよね(笑)
併設のきなりの湯で温泉に入りました
埼玉出てから・・えーーーっと・・・
5日振りのお風呂です(笑)
大好きなめはり寿司とうどんのセット
“ありがたい”の意味を噛みしめます
濡れた雨具もウェアも天日にさらしました
子供らは夜遅くまで騒ぎ廻ってうるさかったけど
久しぶりに安心して眠りに就くことがことができました・・・
山行はこれでおしまいです
これは失敗ではない選択肢の一つだった
それは自分で出した答え
思い描いていた計画とは大きく違ったけどそれも一つの旅の形
それで良いんじゃないか?♪
計画通り先へ進んだ者、計画断念して山を下りた者
そこには勝者も敗者もない
自分で出した答えを受け入れそれに従った者ならばそれは賢者なのだと思う
正直、今回の状況の中で縦走を成功させられた人を羨ましいと思う
羨ましいと思うが悔しいという思いはない
全てが計画通りに行かないことなんて日々の生活の中には山ほどある
ままならぬ現実の中で生かされている
ままならぬ現実があるからこそ夢を持ち続けられる
それこそが旅の醍醐味でありそれがそのまま人生なのだと思う
熊野古道の教えって何だろう?
その意味を考える処こそが出発点なのではないかと思う
答は歩く中で考え、歩ききったときに出せれば良いんじゃないかな
そう簡単には答なんて出ないと思う
だから歩き続けられるんだと思う
とかく答を安易に求め答を急ぐ現代の風潮
その利便性の恩恵を受けながらもあらがうことこれも大事と思う
『なぜ山を歩くの?』
「その答を探して廻ってるんです」
答は未だ見つからず・・・
でも、答のある方向は見えた気がした
熊野にはきっとその答があると確信した
いにしえ人の足跡こそがその証拠ではないのか
来年また来ようと思う
でもそれはリベンジではない
そこにはきっと新しい道があるはずだから
だから次に成功したとしても
冒頭の写真に線を描き足すつもりはない
アレで良いんだと思う
“良く生きる”って
そういうことなんだと自分なりに納得できたから
だから・・・
これにて『創刻の旅』にケリを付けようと思います。
SPECIAL THANKS
私の計画書を細かく厳しくチェックしてくださったりゅうちゃん
実際に現地を事前に歩き現場の状況をこと細かく報告してくれた山登なでしこさん
本当にありがとうございました
そして山登なでしこさん
奥駈縦走成功、ほんとうにおめでとうございます!
----完----
ん?・・・
おかしくね?
帰ったのが6日だよね?
日数あわねーぞ!! って?
そうです、これで終わらないのが俺の旅♪
珍道中第2幕へ続く!!!(笑)